Kuroyagi飼育日誌

学んだことの備忘録

偏光型マイケルソン干渉計(2)~偏光ビームスプリッタ~

前回に引き続き,偏向型マイケルソン干渉計をジョーンズベクトルで表現していきます.


光源: 直線偏光(方位角 \alpha=\pi/4)

偏光ビームスプリッタ←今回はこれ!!

1/4波長版

ミラー

1/4波長版

偏光ビームスプリッタ

検出器


[2]偏光ビームスプリッタ
ネットを探し回っても偏光ビームスプリッタ(以下PBS)そのものをジョーンズベクトルで表現している例があまり見当たらなかったので,PBSの役割を果たすジョーンズベクトルを考えてみます.PBSの役割は以下の2点であるとします.


PBSのP偏光に対して \phiの角度をなす直線偏光の透過電界振幅は \mbox{cos}\phi倍,反射電界振幅は \mbox{sin}\phi倍となる
②透過・反射電界振幅間に位相差が発生する


まず,①については直線偏光の偏光軸に偏光軸角度 \phiの偏光板を挿入したときを透過光,直線偏光の偏光軸と直交する軸に対して偏光軸角度 \phiの偏光板を挿入したときを反射光とすればよい.この作用を表すジョーンズベクトルを \boldsymbol{P}\left(\phi\right)とすると,

 \boldsymbol{P}\left(\phi\right)
=\begin{pmatrix}
 {\mbox{cos}^2\left(\phi\right)}&{\mbox{sin}\left(\phi\right)\mbox{cos}\left(\phi\right)}\\
 {{\mbox{sin}\left(\phi\right)\mbox{cos}\left(\phi\right)}}&{{\mbox{sin}^2\left(\phi\right)}}\end
{pmatrix}

となります.何でこんな格好になるのさ!というと,電界の式できちんと解いてあげると出てくるとしか言いようがないのですが,以下に解釈の例を示しておきます.

【解釈】
偏光板の透過偏光軸方向と平行な偏光軸をもつ直線偏光について考えます.これはそのまま光が透過し,このときの偏光板のジョーンズベクトル \boldsymbol{P}\left(\phi\right)は,

 \boldsymbol{P}\left(0\right)
=\begin{pmatrix}
 {1}&{0}\\
 {0}&{0}\end
{pmatrix}

対角化されていて綺麗ですね.偏光子のジョーンズベクトルが対角化されたままで扱えるように,座標変換の行列を考えます.偏光板のおかれている座標系が入力される直線偏光の座標系からビーム伝播軸を回転軸とする回転方向に \phiだけ回転しているとする座標変換の行列 \boldsymbol{R}\left(\phi\right)は,

 \boldsymbol{R}\left(\phi\right)
=\begin{pmatrix}
 {\mbox{cos}\left(\phi\right)}&{\mbox{sin}\left(\phi\right)}\\
 {-\mbox{sin}\left(\phi\right)}&{{\mbox{cos}\left(\phi\right)}}\end
{pmatrix}

であり,偏光板透過後に再び座標を戻す変換を考慮すると,
\boldsymbol{R}\left(-\phi\right) \boldsymbol{P}\left(0\right)\boldsymbol{R}\left(\phi\right)
=\begin{pmatrix}
{\mbox{cos}\left(\phi\right)}&{-\mbox{sin}\left(\phi\right)}\\
{\mbox{sin}\left(\phi\right)}&{{\mbox{cos}\left(\phi\right)}}\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
 {1}&{0}\\
 {0}&{0}\end
{pmatrix}
\begin{pmatrix}
{\mbox{cos}\left(\phi\right)}&{\mbox{sin}\left(\phi\right)}\\
{-\mbox{sin}\left(\phi\right)}&{{\mbox{cos}\left(\phi\right)}}\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}
 {\mbox{cos}^2\left(\phi\right)}&{\mbox{sin}\left(\phi\right)\mbox{cos}\left(\phi\right)}\\
 {{\mbox{sin}\left(\phi\right)\mbox{cos}\left(\phi\right)}}&{{\mbox{sin}^2\left(\phi\right)}}\end
{pmatrix}
以上のように直線偏光の偏光軸に偏光軸角度 \phiの偏光板を挿入した場合の作用行列が導出できます.